旅する農民は地域に笑顔を届ける

我が道を進んだ子ども時代
坪谷純希といいます。出身は新潟県の加茂市です。家の裏に川が流れていて、子どものときはザリガニとかドジョウをとったり。学校帰ってきたらすぐ川に行く、みたいな。学校は遠かったんで、バスで通ってたんですけど、歩くのが好きなんで40分くらい一人でてくてく歩いて帰ってきたりしてましたね。
小学校3年生だか4年生ぐらいから少年野球を始めて、高校3年生までずっと野球はやってましたね。正直、ちっちゃい頃の記憶、あんまりないんです。でも、周りの子がテレビゲームを買ってるじゃないですか。親は買っていいって言うのに、頑なにゲームはしたくない、時間のムダだ、なんて言って我が道を進んでましたね。これをやってしまったらすごいハマっちゃうな、有意義に過ごせなくなるなっていうのを子どもながらに感じてたので。
影響を受けた国際協力活動
高校を出たあとは、寒いのがとにかくイヤなのと人混みが嫌いだったんで、暖かい場所ですし人混みもないってことで、山口の大学に行きましたね。国際文化学部で英語を専攻して。影響が大きかったのがタイの農村地域で少数民族の農村開発支援をしているNGOで、国際協力に興味を持ち出した感じですね。スタディツアーで1回、インターンでもう1回行って、大学終わってからも行きました。ぼくは向こうの人の生活に入り込みたかったんで、一緒に生活して農作業を手伝ったり。全然言葉は通じないんですけど、いい経験だったな、と。
大学を卒業して、そのNGOと関わりのあった別のNGOで常勤ボランティアスタッフを2年ほどしてました。海外の研修生を受け入れて人材育成をする団体です。ぼくは香川の研修センターに行って、住み込みで働いて。その人たちと一緒に、農業の研修とか生活のサポートをする。農業は学んだ経験はなくて、研修の中で実践しながら学んでいった感じですね。
2年働いたあと、青年海外協力隊でペルーに行ってましたね。農業を2年やって、現地を体験してみたいなって思ったんですね。ペルーのサンミゲル郡っていう任地だったんですけど、歩いて小中学校を見つけて、子どもと保護者と先生で協力して野菜を作りませんかっていうミーティングをして。仲良くなって、資料を持っていって先生に話をして、保護者に話をして。ちょっとずつ進めていった感じですね。

ホームステイをしてたんですね、2年間。よくよく聞くといとこだったり遠い親戚だったりが来て一緒にご飯を食べるんですけど、その頻度がすごい高い。その人たちがファミリーって言えばファミリーみたいな感じなんで、どこまでも行くんです。最終的にぼくも、誰かよく分かんないまま、とりあえずファミリーなんだなって受け入れてた感じですかね。家族を大切にする、地域を大切にするみたいなのはいいな、家族ってものを広く捉えてるのが面白いなって思ってましたね。

ホストファミリーと一緒に
足元の暮らしに目を向ける
任期は2年で決まってるんで、そこで帰りましたね。家族を大切にするみたいなのがインプットされてて、足元を見るみたいなのをもっと大事にしてやってみてもいいかな、新潟でとりあえず住んでみようかなって思って、公務員試験を受けたんです。市役所には6年間いました。五泉市ってニットが有名だったり農業してるので、サンミゲルと近いものがあったんでいいかなと思って。
外に出たいって思って、ただ旅に出るだけじゃ面白くないから、軽トラックにモバイルハウスを自分で作って旅してみようって思いついたんですよね。公務員の3年目ぐらいだったかな。せっかくなら作る工程を撮ろうってなって、動画もやり始めて。結局、コロナになっちゃって日本のいろんなところに行くのは難しくなったんで、公務員をしながらキャンプ場とかに宿泊して、仕事を何食わぬ顔でしたら面白いなって思いついたんですよね。家では寝ずに生活してみようみたいな感じで。そうすると、DIYとか動画編集のスキルとか、じわじわ上がってきたんです。同時に、職場で動画の編集能力も買われるようなことがあって。部署を2個経験して、あとの学校教育課では食育に携わることが多くて、パンフレットとか動画を作ったりしてましたね。

さんビズとの出会い
さんビズを受けたのは5年目ですね。さんビズのことを知ったのは、SNSだったと思いますけどね。知人が阿賀町で講座をやるのを見て。何かしら農業をしたいなっていうのがあったんですよ。ただ、農業一本じゃ新潟じゃまずやっていけないなと思って。公務員の時期に、空いている時間を使って自分の好きなことをやってみて、それを掘り下げてみたら何かしらスキルが身につくかな、それが最終的に仕事につながったらいいな、ぐらいには考えていたんです。
農業って農家がやるものじゃないですか。で、家って動かないものじゃないですか。そういう価値観がすごい嫌で、動きがあるけど農業には携わる生き方ができたらいいなと思って。なんとか農園とか付けちゃうと、両足ついちゃうのが嫌だったんで、軸だけブレなければ変わっていくことがOKだよみたいなのを自分に言い聞かせるために、屋号に「旅」をつけたんじゃないですかね。屋号をつけたのは、ほんと起業する直前だったと思います。

さんビズでは、いろんな事例だったり収支計算とか考え方とかをまとめることができてよかったなっていうのと、あの場があることが大事だったなと思うんですよね。考えることは一人でもできるんだけど、なかなかスイッチが入ってやろうっていうのができないっていうのがあったんで。ああいう場があって、周りに同じような人がいたっていうのがよかったですし、阿賀の受講生だけじゃなくて、過去の受講生と横のつながりがやんわりできたっていうのは大きかったですね。

阿賀さんビズを受講中の坪谷さん
さんビズを受けることにデメリットはないと思うんで。ぼくの場合は、技術的、考え方的なところよりも、思わぬ出会いがあったっていうことがプラスになったかな。いろんな人とつながれますよってことで、気軽な感じで受けてもいいし、絶対やろうみたいな普通のビジネス講座みたいなプレッシャーはないと思うんですよ。どうしようかな、ぐらいに思ってる人が参加した方がいい講座かなって思いますね。
さんビズ的な横の広がり
今は、暖かい時期は農業に占める時間が多くて、ときどき里山ハーモニーさんの仕事。この「みのり」で裏山の竹を切って整備して、遊び道具を作ったり。自然体験のイベントのときに、子どもたちと一緒にワークショップをするとか、竹のいかだを川に持って行って遊ばせるとかやってましたね。12月ぐらいから畑ができなくなるんで、竹で雑貨を作ったり木のおもちゃを作ったり。うまく作れるようになったら、販売したりワークショップとかやっていきたいなとは思います。動画の編集もこの時間に。季節ごとの仕事みたいな感じにはなりましたね。

みのりの外観

ちゃんとやろうとすると、どうしても農業のウェイトが上がっていくんですよね。でも、一年目は好きなことをやろうと思ってやって。今、二年目で、逆にちゃんと数字の目標をつけてやってるんですけど、よくなってきたかな。三年目は、もう面積は増やさないで効率よくやっていきたいなって。空いた時間で、もっとさんビズ的なものを増やしていきたいなって考えでいるんですよね。最初の目論見通りではないけど、こつこつ近づいている感じではあるかな。あと、農業も一つの野菜の売り上げでいうと年1万円とかしかなかったり、それを何十種類もやってるから、スモールビジネスっぽい農業をしてるかな。

新たなアイデアで楽しみを生み出す
みのりで遊び場を作ってるんですけど、動かせないじゃないですか。竹のローラーコースターとかシーソーでも竹馬でもいいんですけど、人が集まる施設に持っていくと、わっ、すごい、面白いってなると思うんですよ。そういう移動遊園地みたいなものも、みのりの活動につながってくるのかなって考えてますね。持ち運びできるような大きさで、箱に詰めてそれを屋外に出して使うって感じになると思うんですけど、逆にアイデアが増えすぎたから考えることがあって、なかなか進まないです。

最終的には移動販売車を作って、そこで農産物とか自分で作った雑貨とかを売ったりしたいなって思ってます。移動販売車を作ってないのは、ポップコーン屋もやりたいと思ってるから。ポップコーンをいっぱい作ってるんですよ。ポップコーンの移動販売自体があんまりないと思うんですけど、種から作ってます、って言ったら話題性があると思うんです。全部自分が説明できるというか。ある時は野菜を売れる移動販売車、ある時は雑貨屋として開ける移動販売車。で、ある時はポップコーン屋さんになる販売車、ある時は移動遊園地みたいになる販売車みたいな多機能のやつを作りたいなと思ってて。それを設計するのがすごい難しくって、頓挫してるんです。でも、最終的にはこいつが来たらどこでも面白いみたいなところにね、行きたくて。なんで、さんビズって言うのか分かんないんですけど、そういういろんなことを含める移動販売車を作りたいなっていう思いはありますね。

インタビュー後に作成した移動販売車
コロナのときに外に出られなかったんで、ウクレレをやり始めたんです。替え歌を作ったのは、公務員の周りの人を見てると、真面目な人ほど病んでいくみたいなのがあって。海外で2年いたときは、ほんとに能天気な人たちが周りにいたのに、なんなんだこの差は、って。ちょっとしたユーモアで人を緩めることができたら、救われる人もいるのかな。だから、ぼくは全力でDIYとか動画も作るんですけど、そういうのを考えて、あえて変なことをしてますね。こんなやつもいるのかって。

コメント
坪谷さん、お久しぶりです。香川のNGOで一緒だったかっきーです。
当時は、現状を楽しくするには思いをめぐらしている感じだったけど
今は、どんどん具現化していて、見ている私も元気や笑顔をもらいます。
能天気にいきたいな!病みたくないし…
応援しています~
かっきーって?と思ったら所長でしたか!笑
ありがとうございます!
エネルギッシュさと半端ない行動力の柿沼さんは、今でも僕が目標とする人の1人です。
きっと相変わらず無理しまくってることと思いますが、体に気をつけてくださいね!笑