さんビズ10周年スペシャル対談

 2016年に第1期講座が始まったさんビズも、早いもので今年で10年を迎えます。
 さんビズ立ち上げからメイン講師の榎本と共に講座を支え、盛り立ててくださった金子洋二さんをゲストに迎え、さんビズの未来図を共に語っていただきました。

対談者プロフィール
写真左:金子洋二(かねこ ようじ)
 スタジオ・ファイル主宰、大正大学地域創生学部准教授。
 さんビズ第1期~第4期(2016~2019)の講師を務める。

写真左:榎本淳(えのもと じゅん)
 たねとうず主宰、長岡造形大学非常勤講師。
 さんビズ講座主催者・講師。

対談者プロフィール
写真左:金子洋二(かねこ ようじ)

 スタジオ・ファイル主宰、大正大学地域創生学部准教授。
 さんビズ第1期~第4期(2016~2019)の講師を務める。

写真左:榎本淳(えのもと じゅん)

 たねとうず主宰、長岡造形大学非常勤講師。
 さんビズ講座主催者・講師。


榎本:

 今日は、お時間いただきありがとうございます。
 さんビズも2016年に始まって9年。その間に社会情勢も変わりましたし、このやり方でいいのかな、もっと大事なことがあるんじゃないのかなっていう考え方に切り変わってきた受講生が結構いて、ぼくも地域の中でお金を稼いでみんな幸せになれる活動がどんな方向に行くのかを、さんビズをテーマにしてお話ししたいというのが、今日の趣旨です。

金子:

 なるほど。さんビズのこれからに関わる大きなテーマだね。
 コロナ禍って大きなインパクトがあったと思うんだけども、その間もちゃんと講座を続けてたっていうのが、まず一つすごいなって思いますよね。

榎本:

 はい。やりにくい面はあったんですけど、最終的には自分が責任を持つっていう立ち位置で来てくれたので。

金子:

 あのときは、世の中のルールに従っていかないと反社会的だって思われる空気でしたね。それに対する危機感みたいなものはありながら、自分の活動できることを求めて来てる人たちもいたのかななんて思ったりもしたんだけど。あのときって、どんなビジネスが生まれてましたっけ。

榎本:

 ぽんせん、天然酵母のパン、子どもの遊び場。ロースイーツ、ニホンミツバチの非加熱はちみつ。こけしを作る人も。

金子:

 起業率がすごくないですか、さんビズ。みんな何かしら始めてる。大上段に構えないから、起業もしやすいのかな。

榎本:

 そうなんですよ。ハードルをすごく低くして、とりあえずやり始めてみたらどう、って勧めているので。

金子:

 うん。自分で何か一歩踏み出したっていう実績は必ず残るわけで。また違うことを思いついたらやってみようって、ハードルがぐっと下がることでもあるんでね。
 今日はこれからのさんビズのあり方みたいなことがテーマなんだけど、榎本さんはどんなこと考えてるんですか。

榎本:

 さんビズは、最初は月3万円稼ぐ目的で来てるわけじゃないですか。だいたいは行かないんですけど、自分の中に喜びみたいなのはちゃんと見つけ出すことができていて。で、稼ぐのをもうちょっと頑張ってみようかなって思ったときに、何か違うな、3万、5万、10万になってっていう感じが自分のイメージと違うってことに気づく人がいるんですよ。
 その違和感って何だろうなって。わたしは社会とつながるために始めたんだ、身の周りにいる人の幸せのためにこのビジネスを始めたんだみたいな動機に気が付いて、月3万円の目標に行くことを求めないっていう。
 コミュニティの中でみんなが生きていく方策が主眼に置かれた講座のやり方ってないのかなって考えてるんですよね。

金子:

 副業ってブームじゃないですか。さんビズは、それとは 違うムーブメントなんだろうなって。隣人とのコミュニケーションを通してビジネスが成り立つかどうかってことが大事なんだよってことを伝えながら、卒業生を生み出してきたと思うんだけど。その価値をどう表現するか。
 公益性とかまちづくりとか、大げさな言葉にしなくてもいいんですよ。大きな経済だけが動いて、それで出てきた矛盾をどう解決するかっていうのを強烈に地域社会に投げかけられている感じはしていて。ミクロなところから残していかないと、社会は構築できないんだろうって思っていて。そのミクロとビジネスを掛け合わせた最小単位がさんビズにたくさん事例としてある気はしてます。

榎本:

 コロナのときは、イベントがキャンセルされたりして、商品を売れる場所がなくて困ってるさんビズ生って結構いたんですよ。じゃあ物々交換しようって言い出して。お互いが同意すれば、物もサービスもOK。その一年間で、4、50回くらい交換したんじゃないですか。

金子:

 へぇーっ!それって、非貨幣経済ですよね。もっともっと幅を利かせていいと思うんです。貨幣が悪いわけじゃないけど、どうしても独り占めの方向に成長してしまう性格を内在しているので。
 非貨幣経済ってそんなに大きな成長をし得ないじゃないですか。信用できる経済ですよね。さんビズって、間違いなく分かち合い経済に入るんだろうって感じてます。
 一万円札の顔になった渋沢栄一さんが「合本主義」を唱えたわけですけど、それは間違いなく分かち合い経済ですよね。さんビズはその中のすごく基礎的なインキュベーターであることはできるんじゃないかなって考えてます。

榎本:

 ぼくも子どもの頃は結構あったんですよ、お裾分けとか。ギリギリの世代だったのかも。全部そうなる必要はないけど、もっといろんな選択肢があるんじゃないのって感じますけどね。

金子:

 人間が幸せを増やしていく11の条件の中の8つぐらいが、家族とか友達とかすごく身近な顔の見える関係性が充実することにつながっている。その人が根差している地域の充実度に関わることが圧倒的に多かった。そういう環境の中で人間は幸せを増幅できるっていうことをハーバード大が発表したから、とても注目されたんだけど、じゃあそれを世の中の仕組みとどうリンクさせるんだっていう議論がまだ足りてなくて。それって地域社会をどう充実させていくか、世の中の構築の仕方を根本から変えていくっていう議論にならないとおかしいわけですよね。さんビズでそういうやりようを見つけていって、さんビズファミリーが広がっていって、幸せの輪が広がることにもなるのかなってイメージできます。

榎本:

 さんビズは、やったら何だか気持ちいいいってことが感覚的に分かって自然とやってる、お互いキャッチボールし合ってる感じですかね。

金子:

 これがネットで起きてもあんまり実感はできないわけだ。数字に地域と人との関係性というプラスアルファが乗っかることによって、さらに充実していくってことですよね。

榎本:

 でも、数字以外でどうやったら自分が目標を達成できたって判断できるのかが分からないんですよね。

金子:

 分からないですね。お金以外に世の中に新しく生み出した価値を換算できる仕組みがあってもいいのかな。さんビズで作ってみたらどうですか。地域で何かが循環すれば、付加価値が生まれてるわけですよね。何かで表すことができたら面白いな。

榎本:

 そうですよね。イベントで人のつながりができたとか、物々交換で物の行き来があったとかはある程度数字に置き換えられるかもしれない。どうやって地域の中でいいことを循環させていくかが、キーワードになりますね。
 講座のコンセプトも、経済のこれからのあり方自体を問い直すようなコンセプトがいいのかな、変え時かなって。

金子:

 ターゲットを分析してみるといい気はします。さんビズが目指しているものが割と普遍的な感じはするんですよ。トレンドも上昇傾向にあるのかなと。

榎本:

 さんビズを始めるとき、洋二さんの起業講座を受けたじゃないですか。そのときは、ターゲットって30代半ばから後半の、得意なことはあるけどまだ仕事になってない人たちだったんです。でも、自分が子育てを始めて分かったんですけど、もうちょっと落ち着いてきた40代、50代が実は一番さんビズに合ってる。最近は、高齢者向けのニーズもあることが分かりましたし。

金子:

 そこは大きな可能性があるでしょうね。地域社会って元々いろいろだから、その人たちが混ざる講座っていうことでもいいのかもしれないよね。それぞれに響く言葉を作るのって難しいけど、榎本さんはそういうとこ器用だからやっちゃうんじゃないかな。期待してます。

榎本:

 年輩の人たちは、若い世代と同じ土俵でビジネスの話をする機会が普段ないじゃないですか。それがすごく刺激になる。逆に、若い世代からすれば自分たちの親かそれより上の世代の人たちから、知らないことを教えてもらったり、多世代の交流みたいなことにもなっていて。意図してたわけじゃないんですけど、面白いなって。

金子:

 それって、今の世の中にすごく大事。地域社会とちゃんと向き合って来ないもんだから、人間ってどういうものなのか分かんないまま大学生になっちゃうんですね。不安でしょうがないよね。だから、そういう子たちにもさんビズをお勧めしたいと思う。親が認めるような安定した職業に就かなきゃというところで心配する若者がいっぱいいるんだけど、そんなところで自分を否定しなくてもいいんだよ、と。ちょっとさんビズやってごらんよ、あなたにもできることがあって、もっと自分の人格が自分なりに理解できて育っていくから、っていう場にもできたらいいんですよね。
 社会勉強する場としてのさんビズってのは、あるんじゃないかなって。こういう世界があるってことを彼らが知ることは、大いに意義があるだろうなと思いますね。一種のオルタナティブですよ。

榎本:

 その自覚はありますけど。

金子:

 マクロから決まっていく世の中の仕組みに反発する人っていつの時代もいるし、今も増えてるんだなって実感してます。メインストリームにはならないけど、もうちょっと日の目を浴びる時代が来るんじゃないかなって思いますけどね。ぼくも引退したら、さんビズみたいなことをやりながら生きていくことになると思うので。

榎本:

 大学の授業の中で、さんビズ的な実験はできる環境にあると思うんですよね。ただ、就職することと乖離していて、別次元なんでしょうね。

金子:

 そういう意味では、教育の世界にさんビズが入ってくるのは大賛成で。高校生になると探求学習の時間があるでしょ。その中に、ちょっとした商売も生まれるじゃないですか。そして、地域とのつながりを前提として持っているので、まさしくさんビズですよね。そういうところにも進出していってほしいくらいですよね。

榎本:

 さんビズの役割って何かなって突き詰めて考えたときに、冊子で紹介してる受講生の生き方を見てほしいなって。聞き書きって手法でインタビューしてるんですけど、基本さえ学べば中高生でも作品を作れるんですよ。テーマを地域の経済とか産業に寄せていけば、今の若い子たちが働き方、生き方を知る機会になる。本人からじかに聞いて咀嚼して作品を作るっていう。

金子:

 学生同士でやってみても、学びが大きいなって感じたんですけど。いい訓練になるね。

榎本:

 最近、相談があったのが中高生を対象にしたさんビズなんです。ロールモデルがないわけですよ。これから社会に出て、わたしはどんな風に生きていこうとか、何をしたら社会に貢献できるのかとか、自分は何をしたときに幸せを感じられるのかとか。みんなと同じ進路、みたいになってるらしいんですよ。

金子:

 さんビズの根本的な考え方は、ちゃんと地域の顔の見える商売を手抜きせずにやっていこうってことですよね。それって本当に商売の基本だと思うんですよ。だから、さんビズじゃないビジネスと対比させるんじゃなくて、全てのビジネスの基本はさんビズにあるんだっていう考え方を持っててもいいんじゃないかな。それをうまく表現できると、総合、探求学習の中でもウェルカムなものになっていくだろうし、ダブルワークやシニア層にもつながっていくんだろうなって思うので。

榎本:

 さんビズが逆行してるわけじゃないですもんね。世の中の経済活動も、少しずつこっちにね。

金子:

 行かなきゃダメなんです。予測不可能で複雑すぎる世の中になってきてしまっているから、単純化しながら構築できる身近なコミュニティに戻ってこざるを得ないんですよ。それを作れるかどうかによって、その地域に住む人の幸福度が変わってくる。そういう価値観がスタンダードになってくると、追い風にもなるんだろうなって。だから始めていかないとってことだと思いますけどね。

榎本:

 そうですね。過去からつながってきた人たちの知識とか経験を次の世代に受け渡して、っていうのを積み重ねていかないと。自分も渡す側になったのかなって実感がありますよね。

金子:

 ははは、ちょっと早いよ。でも、そういう心境はよく分かります。起業したいっていう学生もちょっとずつ増えてきたかな。

榎本:

 それは希望が持てますね。お金になるかどうかはともかく、なんか始めてみない、ってね。それがさんビズの種になるかなって思いますね。

金子:

 うん、希望が持てる。発展の余白は、まだたっぷり以上ある。起業ほど楽しいことはないですよ、人生送るのに。

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